内観療法は、自己観察法のひとつです。
一言でいうと「愛を思いだす」ための取り組みです。
どんなに愛されていたのか。
どれだけのことをしてもらったのか。
それに対して自分は、どんなことをどれだけ返すことができたのか。。。
瞑想と少しだけ似ているけれど、違います。
「感謝」という深い意味を実感できるのが内観です。
内観療法とは
内観療法は、浄土真宗の「身調べ」という修行法がルーツです。
元々は願をかけ、お堂に籠り、修行したそうですが、それを吉本伊信により自己の体験に基づき改良したものです。
心理療法は、外国から輸入されたものが多い中で、「森田療法」とともに日本で創始された代表的なもののひとつです。
「内観法」というのが基本で、自分を客観的にみるための修行法です。
これはマインドフルネス、ヴィパッサナとも、そして仏教の八正道の「正念」とも共通する部分があります。
違いは、ある特定の事柄だけをひたすら回想していくということ。
内観法を治療として応用したものが「内観療法」で、心理療法のひとつとして世界でも広く認められています。
日本では、日本内観学会、日本内観医学界、国際内観療法学会などで学術的に研究されている、そうです。
内観療法のやり方
施設により多少の違いはありますが、内観療法は集中内観と日常内観があります。
集中内観
内観療法の中心は集中内観です。
1週間、合宿の形で、外部からの刺激を遮断し、会話を一切しないで、屏風に囲まれた空間で、ひたすら自分を見つめます。
といっても、瞑想とは違います。
していただいたこと。
して返したこと。
迷惑をかけたこと。
内観はこの3つだけをひたすら記憶をたどって回想していくんですね。
それも1日中(だいたい朝6時ころより夜9時ごろまで)。
期間は7日間。
瞑想と少しだけ似ていますが、母親、父親、兄弟、伴侶、子供、友人など一人一人を3歳ころから、上の3つをひたすら回想するんです。
3歳ころから(記憶がある頃から)現在までを3年くらいずつ、してもらったこと、して返したこと、迷惑をかけたことを、ただただ思いだしていきます。
2時間くらいで面接者がやってきて、どんなことを思いだしたか、どう感じたかなどを報告します。
食事の時間になると、「食事です」とだけ声をかけられて、屏風の外に食事が置かれます。
それを食べ、また内観を始めます。
お風呂は「お風呂です」と声をかけられ、順番に(もちろん一人で)入ります。
すれ違っても会話はしません。
挨拶もしないで、ただすれ違います。
これはヴィパッサナ瞑想の合宿でも同じですが。
思いだすのは、してもらったこと、して返したこと、迷惑をかけたことの3つだけです。
ここが内観療法のポイントで、迷惑をかけられたことは思いださないんです。
母親から始め、父親、兄弟、伴侶、子供など身近な人を内観していきます。
日常内観
日常内観は、通常は集中内観を経験した人が、生活の中で1~2時間内観することで、内観の効果を高め、持続することを目指すものです。
なので、あくまで集中内観がメインになります。
内観療法の効果
記憶の置き換え
幼い自分が感じたことを、大人の自分が経験することで、記憶を変化させることができることが内観の効果として大きなものだと思います。
少し難しく説明すると、自分の過去を掘り下げていくことで、
反省⇒懺悔⇒感謝⇒意識の変革が起こります。
叱られたことに子供は傷つく場合があります。
親とすれば躾けだし、教育として叱ったのですが、子供がそうとらない場合、トラウマとして心の奥に残ってしまう場合があります。
その時、心は「叱られて悲しい」という感情とともに記憶します。
心は、辛いものに蓋をしようとしますから、心の奥に閉じ込めます。
しかしそれは、無意識の中で残っていて、自分では気づかない感情として人生のところどころに顔をだしては、いたずらをします。
内観によって、そのことに焦点を当てると、心の表面に出てきます。
この時、大人の感覚でそのことを見つめ直すことができます。
叱られたのは自分のために親がしてくれたのだ、と気づきます。
これによって、記憶の変革が起こるんですね。
記憶は消すことはできませんが、変えることはできます。
自己肯定 自尊心がよみがえる
内観の3つの問いに対する過去の自分を振り返ることで、深く反省し、記憶の置き換えをすることで、自分は愛されていたのだという認識が生まれます。
愛されていた、人とつながっていたのだという認識は安心感を与えてくれます。
これが自尊心へとつながり、自己肯定感が高くなります。
自己を愛するようになると、自己中心的だった性質が改善されます。
内観療法を体験して
私は東京の白金台の「白金台内観療法研修所」で7日間座りました。
やってみるとわかりますが、集中内観はどんどんいろんなことを思いだします。
途中から結構きつくなります。
とても辛い期間があります。
それが少しずつ変化して、涙が止まらなくなりました。
研修所につくと、まず簡単な説明をレクチャーしてもらいます。
それから畳の部屋に通されると、四方を屏風で囲ってありました。
そこに入り、胡坐で座り、母親から始めました。
してもらったこと、して返したこと、迷惑をかけたことを思いだしていきました。
最初はぼんやりしていた記憶がはっきりしてきて、忘れていた細部が記憶にのぼってきました。
「あんなことしてもらったんだ」
「あんな迷惑をかけたんだ」
「そういえばあんなことがあった」
と、どんどん思いだしていきます。
その時の母親の表情や言葉のトーン、感情も同時に思いだしました。
膝を抱えて泣いている自分を癒す
膝を抱えて泣いている自分が、リアルにいるんです。
懐かしさやせつなさ、辛さ、さみしさなど、その時の自分の感情がどんどん出てくるんです。
これにはびっくりします、ほんとに。
こんなことがありました。
幼稚園の頃、遊んでいて小さな池に落っこちたことを思いだしました。
落っこちたのだけはなんとなく覚えていましたが、水の冷たさや、息ができない苦しさも、その時思いだしました。
それから幼稚園の先生に助けられて、教室で着替えをしてもらいました。
母親が迎えにくると、先生が池に落ちたと説明して、母親は鬼のように先生に怒っているのを思いだしました。
怖いという気持ちと、自分がいけないことをしたという思い、泣いている自分も同時に思いだしました。
そうすると、「怖い」という気持ちが小さくなっていったんです。
幼い時は、ただ怖かった。
大人の今、それを回想すると、「母親は自分のために必死だったのだ」と理解できて(大人の眼でそれを見ることができて)、怖いという感情が小さくなりました。
恐怖を感じて、胸がぎゅっとしまっていたのが緩んできました。
泣いている自分に、「大丈夫だよ」と自然に言っていました。
そうすると、今まで忘れていた、温かい牛乳を飲んだこと、冷えていた体が少しずつ温かくなったことなどを思いだしました。
そんな感じで、次から次から思いだしては、記憶の修正をしていきます。
辛くなったり、さみしかったり、確かにきついですが、マインドの奥に押し込めていたものが、でてきて癒されていく感覚がありました。
自分をとことん見つめ、泣いたりほっこりしたりする1週間でした。
内観療法の施設と料金
ここがおすすめです。
白金台内観研修所
所長さんは厳しい中にも温かさがあり、内観療法の前提である「深入りしない」ように、優しく修養者を見守っていてくれます。
ここは毎週日曜日に入室して、土曜日に終了します。
それで7日間。
費用は宿泊費、食費などすべて込みで7万円です。
どうしても途中入所しかできない人は相談してみるといいと思います。
論より証拠。
特に瞑想している人(もちろんしていない人も)は、一度体験してみるといいと思います。
おすすめの本
とてもわかりやすいです。
初心者から、経験者が学び直すのにおすすめです。
みんな、がんばれ^^